ボトルネックは本当に一つなのか?TOC(制約条件の理論)を解説!

生産技術

どうも!カワヤスです。
過去記事では、TOCの概要について述べました。記事内ではボトルネックを見つけると書きましたが、本当にすぐに見つけられるものでしょうか?この記事ではボトルネックを見つけるために、ボトルネックと非ボトルネックとのキャパシティの違いについて言及して参ります。今まで設備能力を検討してきて悩みを抱えていた方は、設備のキャパシティの本質について気づくきっかけになればと思います。この記事が皆様の設備能力検討のヒントとなれば幸いです。

なお、本記事で紹介する内容はエリヤフ・ゴールドラットさん著書の「クリティカルチェーン」に基づいています。この記事で紹介しきれないノウハウがぎっしり詰まっていますので、興味を持たれた方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
本書リンク:クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?

TOCの概要については過去の記事をご参考ください。
過去記事:ザ・ゴールの制約条件の理論(TOC)をわかりやすく解説!

結論

それでは早速結論です。結論:ボトルネックはやはり一つです。

おいおいカワヤスさん。そんなことないでしょう。うちの向上はボトルネックだらけだよ。あちこちで仕掛品の滞留が起こっているんだと声が聞こえてきそうですが、しっかり解説していきたいと思います。では行きましょう!

過去の記事で述べたように、重要なのは工場全体のパフォーマンスです。途中の加工工程でいくら作業が遅れようが、最終的に予定通り加工が終わればそれでいいはずです。一つ一つの加工の納期を守ろうとする考え方はコストワールドの考え方です。一方で、工場全体のパフォーマンスを守る考え方はスループットワールドの考え方です。TOCの考え方に基づくと、スループットワールドの中ではボトルネックは一つです。本当にそうなのでしょうか?

コストワールドとスループットワールドの考え方については過去の記事をご参考ください。過去記事:スループットの最大化を妨げるものは何か?経営哲学の視点から生産技術を考える!

仕掛品の意味


ある加工工程ラインを考えます。Xがボトルネックとします。ボトルネックは常に稼働するように工程を調整しなければなりませんね。でなければ生産をストップすることになりますので。すなわち、機会損失が発生することになります。そして、予期せぬトラブル、いわゆるマーフィが突然やってきたとします。作業員が急遽病欠したり、機械のトラブルによる損傷などです。どの機械にもそういったリスクは孕みますね。

それでは、Xの直前の工程がそういったトラブルを起こすとしましょう。ボトルネックを保護するための対策はどのようなものがあるでしょうか。それが仕掛品です。仕掛品をXの前に蓄積しておけば、仕掛品の数だけ時間的猶予が得られます。

トラブルが重なった時の対処法

どころが、トラブルというものは単発で済む場合もあれば、複数回重なることもあります。その場合はどうなるでしょうか?
だんだんと仕掛品が少なくなり、最後はゼロになってしまうでしょう。そのようなことが許されますか?もしそんな状況を許したら、次にマーフィが現れた時に、Xには仕掛在庫がなく、作業がストップしてしまうことでしょう。稼働率100%を保つことはできません。
ということは、仕掛品がゼロになることを防ぐためにトラブルが解決して資材の流れが元に戻った時、何をしなければならないでしょうか。Xの前の仕掛在庫を補充することが望ましいですね。
しかし、そのためにはXより前の工程ではそれまでのペースで資材をXに流すだけでなく、仕掛在庫を補充するための作業もしなければなりません。それも、次にマーフィが現れる前までに迅速に行われなければなりません。すなわち、Xよりもキャパシティが大きくなければいけないということです。

結論

どれか一つの工程、つまりリソースを100%用いるためには、その前のすべての工程にはより大きなキャパシティが求められます。マーフィが現れるとそれなりのダメージが発生します。無視できるような小さなものではないはずです。仕掛在庫を補充するために各工程が作業できる時間も限られています。となると、Xよりごくわずかにキャパシティが大きい程度では対応できないということになります。
二番目に強度が低い輪が、一番強度が低い輪とほとんど同じではダメなんです。制約条件が一つということは正しいのか。鎖でいうと、強度の一番弱いところと二番目に弱いところではほとんど差がなく、実質制約条件が2個あるということはないのです。

カワヤス的補足

とはいえ、あくまでも理論上の話です。
実際の工場では、元々の設計を市場の需要に合わせてあり、キャパシティがどの機器も一緒である可能性はあります。しかし、そのような市場の需要に全ての設備のキャパシティを統一してしまうと、これもまた工場の経営は大変苦しいものになるでしょう。工場を稼働した状態ではマーフィには対応できないです。工場を経営する上では、ボトルネックとどう折り合いをつけるかが重要です。

まとめ

結論:ボトルネックは一つです。
ボトルネックに近いキャパシティの設備があると、マーフィに対応できず、ボトルネックの製造が停まってしまいます。これは大損失を意味します。
ボトルネックを停めないためには、ボトルネック以外の工程に余裕をもったキャパシティが必要です。

最後になりましたが、本記事が皆様に少しでもお役に立てれば光栄です。今後ともカワヤスブログをお願いいたします。

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