制約条件の理論をプロジェクトに反映した時の期待効果とは?ザ・ゴールの制約条件の理論をわかりやすく解説!

生産技術

どうも!カワヤスです。
これまでは、TOCステップ1~3をプロジェクトにどう反映するかについて述べました。では、実際にプロジェクトに反映するとどのような効果を期待できるのでしょうか?この記事ではプロジェクトの全体最適を目指し、プロジェクトに制約条件の理論を適用した際の期待効果について具体的に言及して参ります。今までプロジェクト管理で悩みを抱えていた方は、改善の本質について気づくきっかけになればと思います。この記事が皆様のプロジェクト管理のヒントとなれば幸いです。

なお、本記事で紹介する内容はエリヤフ・ゴールドラットさん著書の「クリティカルチェーン」および「ザ・ゴール」に基づいています。この記事で紹介しきれないノウハウがぎっしり詰まっていますので、興味を持たれた方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
本書リンク:クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
本書リンク:ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
プロジェクトにおけるTOCステップについては過去の記事をご参考ください。
過去記事:プロジェクトにおけるボトルネックは何か?

結論

それでは早速結論です。
結論:以下のような効果を期待できます。
効果その1:期限内にプロジェクトが完了するとメンバーが信じる。
効果その2:不必要に間違った警報が鳴らなくなった。
効果その3:やることがないからといって他にプレッシャーをかけることが無くなった。
効果その4:学生症候群が消えた。
効果その5:何を優先したらよいか、皆が理解できるようになった。
効果その6:マルチタスクを大幅に減らすことができた。
効果その7:リードタイムを短縮できるようになった。
効果その8:リソース(作業員)の不足がなくなった。

おいおいカワヤスさん。そんな都合の良いことばかりが結果として表れるわけ訳ないじゃないですかと声が聞こえてきそうですが、しっかり解説していきたいと思います。では行きましょう!

効果その1:みんな期限内にプロジェクトが完成できると信じ始める。

なにを変えるのか?プロジェクトの進捗状況の評価方法を見直すのです。
なにに変えるのか?クリティカルパスの何%が完了したかだけを測るように変えるのです。

すると、どうなるか?例えば、製品の完成が遅れるのが誰の目から見ても明らかだとしましょう。ちょっとやそっとの遅れではない。かなりの遅れだとしましょう。そういう場合にどうするかが問われます。まずは品質チェックを少し甘くして品質が多少落ちるのは仕方のないことだと妥協します。次に、製品の機能を削ったり縮小したりして仕様を落とします。先を見越してチームのメンバーみんながどの機能を削ったらよいかいろいろ提案することもあるでしょう。ところが、それがすっかり無くなります。これはどういう意味でしょうか?期限内のプロジェクトの完成を信じ始めるからということです。

効果その2:これまでのように不必要に間違った警報が鳴ることがなくなる。

なぜか?それは、クリティカルパスの進捗を評価することで進捗度を精度よく把握でき、マネジャーが不必要に心配することがなくなるからです。

効果その3:やることがないからといって他にプレッシャーをかけることがなくなる。

なぜか?それは、部分効率化は全体効率化にならないことを理解したためにプレッシャーをかける必要性が無くなるからです。

仕事が無いからと言って、仕事をするために前工程の優先順位を変更して仕事をすることは、一見手持無沙汰な作業員の効率が上がるために全体効率へ繋がると考えがちです。このような能率症候群(コストワールド的思考)はプロジェクトにも潜んでいます。どころが、一旦これらの考えを理解すると、クリティカルパスを守るためにと敢えて他を急かせるようなことも無くなります。

効果その4:学生症候群が消える。

なにを変えるのか?これまでのようなステップ毎の期限設定は廃止する。

これまでは例えば期限まであと2週間あると、まだ時間があると思って作業を先延ばしにしていませんでしたか?期限設定を廃止すると、パスの途中に別の作業者による作業中のステップがあって、パスの先まで作業を続けて実行できない状態の場合、作業は開始しないし、逆にパスの途中に作業中のステップがなく、パスの先まで作業を続けて実行できる状態の場合、すぐに作業にとりかかります。
一つ一つのステップを期限内に終わらせることができるかどうか考える無駄を省いて、時間を節約しできるのです。まだ時間があるから作業を先延ばしにするようなことはできなくなります。期限を設定していたときは作業を完了するまでの期限が2週間だとすれば、その2週間は作業者の時間でした。プロジェクトリーダーだからといって、期限を与えている以上、もっと早く作業を終わらせろをプッシュすることはできません。一週間経ってからプッシュし始めたり、あるいは様子を伺っただけでも、相手からはまだ1週間あるじゃないですかと怪訝な顔をされます。しかし、期限設定の廃止後は余分な時間は削られています。作業が予定通り終わらないことも作業者はよく承知しているし、マネジャーが何を心配しているのか、どうして作業者のところへ様子を伺いに行くのかもよくわかっています。

効果その5:何を優先したらいいのか、皆の注意が集中する。

なぜか?クリティカルパスを評価基準としているので、必然的に優先すべき作業がわかるからです。

何を優先すべきか考える無駄な時間も無くなります。人によって優先度が変わるということもなくなります。

効果その6:マルチタスクを大幅に減らすことができる。

なぜか?優先すべきことが明らかとなったため、皆目の前のタスクに専念できるからです。

誰かが大きな声を出して自分のプロジェクトを優先順位を変えてまで最優先で行わせることが無くなりました。

効果その7:リードタイムが短くなる。

なぜか?セーフティの組み込みおよび浪費が消え、最速でクリティカルパスの作業が行われているからです。
過去記事:リードタイム長期化対策!短期化する策とは?

効果その8リソース(作業員)の不足がなくなる。

なにを変えたのか?あるステップの作業を始めるのに必要なものは全部揃っているのに、人だけが準備出来ていないことがよくありますよね。別の作業で忙しかったりしています。それを変えます。
なにに変えたのか?でもクリティカルパス上ではそんなことは許されません。クリティカルパス上で行われている作業は、必要なリソースを前もって準備するのです。
どう変えるのか?クリティカルパスでの作業が始まる1週間前に、担当者にそのことを伝えておくだけです。

3日前と前日にも伝えます。重要なのはクリティカルパスでの作業が始められる段階になったら、他の仕事はとりあえず忘れてクリティカルパスでの作業に集中しないけばいけないということを皆が理解していることです。もしみんなが理解していなければ、それまで早め早めに作業を行ってきたことが全て無駄になってしまいます。

まとめ

期待効果は8つありました。
どれも、制約条件の理論を理解していれば納得の効果だと思います。しかしながら、非クリティカルパス上で何らかの問題が起こった時はどうすればよいでしょうか。本当に大丈夫でしょうか。クリティカルパスのみの評価だけでは、非クリティカルパスの状況はわからず、マーフィが訪れた時にしっかり対処できるのでしょうか?今後はそのような視点から言及して参ります。

最後になりましたが、本記事が皆様に少しでもお役に立てれば光栄です。今後ともカワヤスブログをお願いいたします。

 

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